ラーメン(パラ♂、修羅♂)
「オヤジ、ラーメン一つ」
夜が明ける少し前。プロンテラの下町の一角にあるラーメン屋台。
暖簾の奥にある長椅子にいかつい鎧姿の男が座っている。
「おまち」
程なくして、男の前に置かれる丼。温かな湯気を上げるラーメンだ。
「一仕事終えた後のこの一杯。これこそ最高の一時」
割箸を手に取り、丼に一礼。そして、箸を摘み、左右に引く。パキッという心地よい音を立てて箸は縦2本に割れる。
「いただきます」
そう言って至福の一杯を口にしようとした時だ。
「あっ!ダルジだ!おはよう!」
勢いよく背を叩かれ、危うく丼をひっくり返しそうになる。それはかろうじて回避する事が出来たが。
「璃緒か......」
眉間にしわを寄せ、振り返ればそこにはしまった、という表情で手を合わせる見慣れた修羅の姿があった。
「ごめん、食べてる最中だった?」
「幸せをこれから満喫しようかという所だ」
ダルジの隣に璃緒も腰掛け、ラーメンを注文する。
しばらくして、璃緒の前にもラーメンが置かれる。
「そういえば、耳寄りな情報を入手したんだ......アマツの店について」
ピクリ、とダルジが璃緒の方を向く。
「新しい店が出来るらしいんだ......。今日かららしい。噂ではかなり期待できるらしいと......アマツから来た、確かな筋からの情報だ」
「何だと......」
ガタン、とその場で立ち上がりそうになったダルジだが、そこは何とか踏みとどまり再び目の前のラーメンに箸をつける。
「......ダルジ、今からの予定は?」
「これを食べ終え、あとは次の出勤時間まで寝るだけだ。......しかし、そんな話を聞いてこのまま家に戻って寝るなど......できるわけがない」
「そうか、しかし今回はなかなか厳しい戦いかもしれない。情報を掴むのがやや遅れたしな。......それでも行くか?」
「勿論だ」
「じゃあ、決まったな」
黙々とかわされる会話と、ラーメンをすする音。
あまりにも真剣な表情で交わされる会話に、ラーメン屋の親父も、何か並々ならぬ事態なのではないかと思ったのだろう。静かに仕事をしているが、耳は密かに聞き耳を立てている。
と、コトン、と丼を置く音。
「オヤジ、勘定だ」
「俺も」
「へ、へい、毎度」
カウンターに各々小銭を置く二人。すっかり気圧された様子のオヤジが恐る恐る小銭を受け取る。
「よし、じゃあ行こうか。ポタは取ってある」
「うむ」
璃緒がブルージェムストーンを手に、アマツヘの門を開く。
「お、お気を付けて」
思わずオヤジも見送りの言葉を掛ける。
「ん。またよろしくな、オヤジ」
こうして二人はワープポータルの光の中に消えていった。
「それで璃緒、店は何所だ?」
「うん、情報によれば港の近くみたいだ、市場に出入りする水夫向けらしい。いこうか」
璃緒が差す方向を見、こくり、とダルジが頷く。
二人が向かったのは......新規開店のラーメン屋さんである。