或る朝の一幕(AB♀、修羅♂)
ある朝のこと。氷柱は、狩りの準備のため宿から東門のカプラ職員の所へ行こうと通りを歩いていた。
歩いていると、次第に視界に巨大な建造物が見えてくる。プロンテラの主要施設の一つ、大聖堂だ。朝の礼拝だろうか、街の人や司祭たちが大聖堂の前に集まっているようだった。
「教会の連中も毎朝大変なものだ...」
大勢の人たちが入口に入っていったり、出てきたり。その様子を見てぽつりと呟く。
カピトーリナ修道院は修行場の要素が強く、教会のように一般人が頻繁に訪れることは殆どない。時折モンクの修行を見学したいと申し出るアコライトが来る程度だった、と思い返す。
しばらくその様子を眺め、そろそろ行くか、と思った時。ふと氷柱は視界の端に入ってきたものに目を止める。
「おはようございます」
聖堂を訪れる街の人一人一人に、赤いアークビショップの法衣を纏った少女が明るい声で声をかけている。
「ナナ殿か...」
ナナは足元がおぼつかない老人を見れば手を取って階段を共に上がり、道が分からない様子の者に丁寧に道案内をし......。聖職者とは斯くあるべきか、と氷柱は感心する。
「......あっ、おはようございます!」
通りに立ち止まったまま自分の方を見ている氷柱に気づいたらしい。ナナはにこっと目を細めて軽いお辞儀をする。
「...ああ、お早う。礼拝の手伝いか?お疲れ様」
挨拶につられて、氷柱はナナの方へと歩いていく。
「朝のお散歩をしてたのですが、今日は教会への礼拝に来られる方が多いみたいで......、お友達のお手伝いと思ってついお節介を焼いてしまったらこの通りです」
ついつい放っておけなくて......と、恥ずかしそうに笑うナナ。
「いや...それもナナ殿らしい。困った者の力になろうという所などはそう思う」
と、氷柱はうなづく。いつも人の手助けになろうと奮闘している少女、というのが氷柱から見た彼女の印象であった。
「ありがとうございます。少しでもお手伝いになってたら嬉しいです」
にっこりと微笑み、ナナはしばらくじっと氷柱の顔を見上げる。
そして、不意に何かを思い出したように問いかけた。
「氷柱さん、お忙しいですか?ついつい呼びとめてしまったのですが」
「?」
狩りに出かける予定ではあった、がいつも一人で行くのが常。機会の融通はいくらでも利く。
「いや、なにか?」
「あの、実は礼拝者が多いから教会の中の椅子を出したかったのですが......教会に今日いる人たちが女の子やお歳の高い司祭様ばかりで」
そこまで聞いて、何となく氷柱も察しがついた。
「男手が入用なら手伝おう、そういう事だろう?」
一人で黙々とオットーと組手をするよりは、貴女の助けをする方が余程一日は充実するものだ、と付け加える。
答えを聞き、ナナは微笑み、
「良かった、ありがとうございます。早速中の子に話してきますね」
と、聖堂の中に入っていったのだった。
歩いていると、次第に視界に巨大な建造物が見えてくる。プロンテラの主要施設の一つ、大聖堂だ。朝の礼拝だろうか、街の人や司祭たちが大聖堂の前に集まっているようだった。
「教会の連中も毎朝大変なものだ...」
大勢の人たちが入口に入っていったり、出てきたり。その様子を見てぽつりと呟く。
カピトーリナ修道院は修行場の要素が強く、教会のように一般人が頻繁に訪れることは殆どない。時折モンクの修行を見学したいと申し出るアコライトが来る程度だった、と思い返す。
しばらくその様子を眺め、そろそろ行くか、と思った時。ふと氷柱は視界の端に入ってきたものに目を止める。
「おはようございます」
聖堂を訪れる街の人一人一人に、赤いアークビショップの法衣を纏った少女が明るい声で声をかけている。
「ナナ殿か...」
ナナは足元がおぼつかない老人を見れば手を取って階段を共に上がり、道が分からない様子の者に丁寧に道案内をし......。聖職者とは斯くあるべきか、と氷柱は感心する。
「......あっ、おはようございます!」
通りに立ち止まったまま自分の方を見ている氷柱に気づいたらしい。ナナはにこっと目を細めて軽いお辞儀をする。
「...ああ、お早う。礼拝の手伝いか?お疲れ様」
挨拶につられて、氷柱はナナの方へと歩いていく。
「朝のお散歩をしてたのですが、今日は教会への礼拝に来られる方が多いみたいで......、お友達のお手伝いと思ってついお節介を焼いてしまったらこの通りです」
ついつい放っておけなくて......と、恥ずかしそうに笑うナナ。
「いや...それもナナ殿らしい。困った者の力になろうという所などはそう思う」
と、氷柱はうなづく。いつも人の手助けになろうと奮闘している少女、というのが氷柱から見た彼女の印象であった。
「ありがとうございます。少しでもお手伝いになってたら嬉しいです」
にっこりと微笑み、ナナはしばらくじっと氷柱の顔を見上げる。
そして、不意に何かを思い出したように問いかけた。
「氷柱さん、お忙しいですか?ついつい呼びとめてしまったのですが」
「?」
狩りに出かける予定ではあった、がいつも一人で行くのが常。機会の融通はいくらでも利く。
「いや、なにか?」
「あの、実は礼拝者が多いから教会の中の椅子を出したかったのですが......教会に今日いる人たちが女の子やお歳の高い司祭様ばかりで」
そこまで聞いて、何となく氷柱も察しがついた。
「男手が入用なら手伝おう、そういう事だろう?」
一人で黙々とオットーと組手をするよりは、貴女の助けをする方が余程一日は充実するものだ、と付け加える。
答えを聞き、ナナは微笑み、
「良かった、ありがとうございます。早速中の子に話してきますね」
と、聖堂の中に入っていったのだった。