昼下がり(モンク♂、修羅♂)
「あれ?スピだ。おはよー!」
昼も間もなくというある日のこと。プロンテラの大通りに広がる露店街。通りを歩くモンクを見、思わず璃緒は声をかける。
「?お、リオー、おはよう!」
声の主に気づいてモンク姿の男-スピキュール-は言葉を返す。
「お昼ご飯?」
「そうそう、たまには外の空気を吸わないと!」
少し、考えている表情をし、璃緒は尋ねる。
「じゃあ、一緒にどう!?ちょうど俺もお昼探してたんだ」
せっかくの休息。唐突な提案だから断られるかもしれない、とは言った後で思ったが、一度口に出したものをひっこめるわけにもいかない。
そんなソワソワしたそぶりが相手にも伝わったのだろうか、
「ああ、いいよー」
ニコッと笑顔で承諾してくれる。門前払いじゃなくてよかった、と璃緒は胸を撫で下ろした。
そこから二人は露店で昼食を買い、通りから少し離れた場所に落ち着く。
「職場引きこもって書類ばっかりだと気が滅入るよ。いっそ午後の仕事すっぽかしたい!」
「スピのお仕事大変なんだね。ついった見てると忙しそう」
二人が知り合ったのはほんの数週間前。冒険者証に期間限定で付与された機能がきっかけだ。同系職ということもあり、話をするうちに街中で会うと挨拶を交わすようにもなった。
彼の自己紹介文には、彼は教会で仕事をしており、普段はあまり外部の人間に会うこともないそうなのだが、この期間に限って自由に行動できるのだそうだ。
時間の拘束が緩く、好きな時に好きな所にいける自分とは少し対照的だな、というのが璃緒から見た彼の印象だった。
「ほんっとにな。でも、そういうリオは病院だろ?病院って大変そうな感じがする」
「病院といっても診療所なんだけどね。バンジー失敗した人の面倒見たりくらいだからなぁ......。どっちかというと無茶振りの兄弟子の面倒見るほうが大変」
「怪我人より兄弟子のが厄介なのか。・・・・・・兄弟子かぁ」
冗談めいた璃緒の返事に笑った後、片手のおにぎりを口に運んで、少し遠くの空を見つめるスピキュール。
「?」
少し、寂しそうな表情をしているように見えて、璃緒はほんの少し、その表情の意味を考える。そして、
-ぎゅむー-
突然しがみつかれて、スピキュールは危うくおにぎりを取りこぼしそうになる。
「!? どうしたんだ!?突然」
「なんとなく、こうしたかっただけ!」
言葉では言い表せない。ただ、時折彼は寂しがり屋なのかも知れない、どこか、自分にも似たところがある気がして、なんとなく放っておけなかった。
それは、とても正しい保証はないし、主観的で身勝手な感情だとも思ったが、きっと本人に尋ねても笑って誤魔化されるだろう。
「ありがと」
笑顔で礼を述べるスピキュールは、冗談めいた口調で付け加える。
「これでモンク服だったらもっと良かったな!」
「じゃあ今度はそうする!」
璃緒も、冗談ぽく笑顔でうなづいた。